STPマーケティングとは、
フィリップ・コトラーの提唱した、マーケティングの代表的な手法の一つで、効果的に市場を開拓するためのマーケティング手法。
マーケティング神様 フィリップ・コトラー
フィリップ・コトラー(Philip Kotler)
「近代マーケティングの父」、「マーケティングの神様」と評され
顧客のセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングを説くSTP理論や、マーケティングの4Pにpublic opinion(世論)・political power(政治力)を加えた6P理論、または4Pにpeople(人)・processes(プロセス)・physical evidence(物的証拠)を加えた7P理論などが有名。
フィリップ・コトラー(Philip Kotler)
マーケティングとは、
企業や非営利組織が行うあらゆる活動のうち、「顧客が真に求める商品やサービスを作り、その情報を届け、顧客がその商品を効果的に得られるようにする活動」の全てを表す概念である。
神様のマーケティング戦略
「R」→「STP」 → 「MM」→ 「I」 → 「C」が基本。
やはりSTP:
- S: 自分が有利になるように市場を分割→イノベータ理論
- T: 目標とする市場を決定→アーリーマジョリティ(キャズム理論)
- P: どのようにして再異化するか→ブランド確率
そしてMM:
どのように攻めるか?がキモになる。
MARKETING MIX
マーケティング戦略において、望ましい反応を市場から引き出すために、マーケティング・ツールを組み合わせること。4P理論と2つの4C理論に集約できる。
4P: (Marketing 1.0)
- Product(製品):製品、サービス、品質、デザイン、ブランド 等
- Price(価格):価格、割引、支払条件、信用取引 等
- Promotion(プロモーション):広告宣伝、ダイレクトマーケティング 等
- Place(流通):チャネル、輸送、流通範囲、立地、品揃え、在庫 等
4C: (Marketing 2.0)
- Consumer(消費者のニーズやウォンツが商品)あるいはCustomer solution(顧客ソリューション)
- Customer cost(顧客コスト)
- Communication(コミュニケーション)
- Convenience(流通は利便性)
4C: (Marketing 3.0)
- Commodity、商品、企業と消費者で共に創る(Co-creation)商品
- Cost、コスト 生産・販売コストだけでなく地球環境を踏まえた社会的コスト
- Communication、コミュニケーション、クチコミ(ソーシャルメディア)、MIS等
- Channel、流通経路、プレイスではなくチャネルなら、オムニチャネルで加速するリアルとネットの融合
STPマーケティング
市場における自社の競争優位性を設定するために、
- 市場の細分化 Segmentation(セグメンテーション)
- ターゲット層の抽出 Targeting(ターゲティング)
- 競争優位性の設定 Positioning(ポジショニング)
が重要だと説いた。
市場のニーズを満たす価値軸に対して自社の優位な位置づけを演出する自社商品やサービスの立ち位置(ポジショニング)を決めるためのプロセス。
市場に対する企業の戦略的なアプローチを決定づける戦略策定における中核的なプロセスであり、市場調査などを行いながら、時間をかけて決定する。
STPマーケティングの目的
市場は常に変わります。顧客のニーズが変化、新規参入する他社、競合の機能拡張、自社の新たな機能、買収や統合など、様々な要因により市場は変化する。
規制の緩和や導入、社会的価値観の変化、ライフスタイルの変化など、市場のニーズが変わる要因は無限。ニーズが変われば、市場からみた商品やサービスの価値やメリットも変化する。
STPマーケティングの目的は、自社のポジショニング創出、市場の変化の追従、新しい市場を開拓するための戦略的アプローチ。
STPマーケティングにより優位なポジションを探し出し、独自性や優位性を高める。
STPマーケティングの考え方
STPマーケティングにおける軸の洗い出しは、
- 外部環境分析から導きだされる機会
- 内部環境分析から導きだされる優位性
から考える。
外部環境分析とは、Customer(顧客)とCompetitor(競合)から導きだされる。
- 顧客が何を欲しているか(ニーズ)?
- 顧客のunmets(満たされてないニーズ)は何か?
内部環境分析とは、Competitor(競合)とCompany(自社)から導き出される。
- 競合に比べての自社の優位性は何か?
手法は3C分析、 SWOT分析。
Segmentation(市場を細分化する)
セグメンテーションは、
マーケティングの対象を市場全体とするのではなく、その一部に絞り込む。
もちろん全員を顧客にしたいと考えるのは自由だが、じっさいには誰もが同じ商品を買うことはないわけで、マス市場からニッチ市場へシフトせざるをえません。
特に、スタートアップでは顧客を絞り込む必要がある。
そのため、さまざまな角度から市場調査し、ユーザ層、購買層といった形であぶり出し、明確化する。
- ジオグラフィック変数 気候、人口密度、文化、行動範囲、住居所在地、勤務地 …
- デモグラフィック変数 年齢、性別、家族構成、職業、収入、世帯規模所得、学歴…
- サイコグラフィック変数 心理的な特性、嗜好性、好み、価値観、興味関心…
- ビヘイビアル変数 行動、態度、挙動、振る舞い、購買活動、購買心理、購買のタイミング、購買目的…
- ライフスタイル変数 ライフスタイル、価値観、趣味、パーソナリティ、購買動機…
- ライフステージ変数 就学中・就職前・転職中・新婚・定年退職後…
- 宗教・価値観 顧客の宗教上の考えや行動…
Exp.
「東京都内に住んでいる、30代の男性で、海外サッカーに興味があり、現在はWOWOWに加入している」
Targeting(ターゲットを決める)
ターゲティングは、
セグメント化した結果、自社の参入すべきセグメントを選定、すなわちターゲットを明確にすること、自社製品のビジョン、ブランドイメージや価格帯がカバーしている消費者グループを選択する。
ターゲットの選定には、自社の強みを活かせたり、競合する他社がいないセグメントを選択することが大切。あくまでも自社が提供できる価値と、顧客が求めるニーズがどこでFitするのかを考える。
ターゲットは必ずしも1グループである必要はない。自社の製品でカバーでき、かつ長期的目標になることも選定のポイント。
Positioning(自社の独自性を探る)
ポジショニングは、
ターゲット層から見たときの「優位点(優位性)」のこと。
いわゆる「差異化」とは少しちがう。差異化は企業側の視点であり、 「機能提案」にすぎない。
ターゲット層が対価を支払ってもよいと思えるだけの価値や魅力があるのか、自社の特徴をターゲット層視点で捉え直し、「用途提案」することを心がけ、製品やサービスの「強み」や、競合他社に負けない「独自性」が何かを追求する。
アプローチすべきターゲット層にどんな不満があるのかを事前に把握し、強みや独自性が明確な企業ほど、長期的にポジションを確保することに成功する。
Exp. Apple
デザインと使いやすさにこだわったアップルは、今や業界でも不動の地位を確立している。
Positioning(ポジショニング:シーブリーズ)
資生堂が展開する「シーブリーズ」というボディケア製品。
海に行ってシャワーを浴びたあとなどに使用して、ひんやりするデオドラントが主軸です。
かつては20代から30代の男性市場を狙っていた。ところが次第に海に行く人も少なくなり、ブランドも高齢化して、時代遅れのブランドになってしまっていた。
シーブリーズは次のようにポジショニングを次のように変更。
- 20~30代男性が海で使用する商品 -> 女子高生が日常シーンで使用する商品
これにより、売上が低迷時の8倍に。
Positioning(ポジショニング:レッドブル)
レッドブルの缶の横を見ると
「ココロ、カラダ、みなぎる」
と書いてある。
リポビタンDは疲労回復飲料、「マイナスをゼロにする」というポジションです。
レッドブルは、「ゼロをプラスにする」というポジションです。
疲労回復飲料というと、リポビタンD、ユンケル、キューピーコーワ、アリナミン、エスカップ、チオビタなどは「疲れた体を回復します」という商品。
レッドブルは「力を発揮したい時に飲む物」というポジショニングで、差異化を図っている。
Positioning(ポジショニング:喫茶店市場)
Positioning(ポジショニング:映像市場)
STPマーケティングの流れ
STPマーケティングは、マーケティング戦略策定プロセスのためのフレームワーク。
- STPマーケティングの、価値軸は自社の商品やサービスのバリュープロポジションに設定します。
- 価値軸は市場のニーズに合わせて自由に設定してください。
- STP分析では価値軸は複数抽出しておくことが望ましいです。
- 価値軸を抽出したら、競合商品やサービスの分析を行います。
- 競合を価値軸のマップにおいていきます。
- 自社がとりうるポジショニングは、競合他社よりも価値軸で上回っている競合他社が創出していない価値軸で勝負できるのいずれかを満たしている必要があります。
STPマーケティングの注意点
順番にこだわらない
セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの順番に行わなくても構わない。
流れは、おおむね市場を細分化し、細分化された市場の中で価値軸を見つけ、そして自社と他社を評価するだけ。極端に言えば、価値軸と自社のポジションを先に決定してからターゲットを導きだしても構わない。
到達性を考慮する
価値軸、自社のポジショニングが定まったとします。しかしマーケティングとして顧客を探し出さなくてはなりません。そのため、顧客の購買行動が把握でき、そして広告を出せる機会が得られる必要がある。
大きさを考慮する
細分化は、まさに市場を切り刻んで小さくして行く事。細分化した市場にターゲットが極端に少ない場合、ビジネスとして収支が成り立ちません。
細分化し、ターゲットとした市場が価値軸をしっかりもち、ある程度の母集団で収支が見込める事が望まい。この場合は、別のターゲットと統合するなど、ある程度の母集団を確保した方が望ましい。
STPマーケティングのまとめ
STPマーケティングは、マーケティング戦略策定には欠かす事のできないプロセスです。
市場の変化に追従し、自社の独自性や優位性を演出するために必要です。
STPマーケティングとは、細分化した市場で自社の優位性を演出する立ち位置を探すためのプロセスである。
- 価値軸に注意し、自社の優位性を徹底的に探し出す
- マーケティング活動で実行可能な到達性、規模に留意する